R16程度の生温さですが、昭師でそふと破廉恥です。
苦手な方、清い方はバックプリーズ。
大丈夫な方は期待はせずに下へどうぞ。















―――――【 青燈(後) 】―――――





「…兄上、顔見せて」

 ふるふると僅かに動く頭。
 醜い、と兄は呟いた。どうしようもない現状に、兄は怒り、そして嘆いて泣いている。 滂沱の様とは程遠いのだろうが、きっと歪んでいるだろうその顔を、兄はその誇り高さで見せる事を拒んだ。

「兄上の顔を見たいんです。ね、良いでしょう?」
「いや…やだ、昭、やめよ!」

 兄の顎を捉え、無理矢理自分と顔を合わせた。兄の目はやはり濡れていた。 その眼が、弟の物とかち合うと、瞬時に怯えの色が走る。

「見るな…ッ!」
「大丈夫、綺麗ですから」

 弱く無様(と兄は勝手に思っているのだろう)な姿を弟に見られる事を怖れてであろう、兄はもがいた。
 しかし、その顎を引き寄せ、唇を寄せると抵抗が緩んだ。 少し色付いた唇、すっと通った鼻梁、うっすらと上気した頬。長い睫の下では、蒼の残光が虹彩を鮮やかに色づかせていた。
 兄は本当に綺麗なのだと、全てに口付けていけば、もう抗う事はなくて、自然笑みが浮かんだ。
 平生は冷徹で高潔な兄が酷く可愛らしかった。

「そんで、凄く可愛いです。どんな美女よりも、どんな美丈夫なんかよりもね」
「…嘘吐け」

 司馬師は、そっぽを向いて唇を噛んだ。 少し俯き加減になったせいか、長い睫の先からぱたりと涙が落ちる様に背筋を脳髄まで痺れが走る。
 一夜限りの愛を紡ぐ娼妓でさえも、適わないだろう妖艶な所作。わざとだとしたら大した傾国だ。
 自分の服を握り締めて震える兄の手をそっと剥がした。 余程強く握り締めていたのだろう、指先は血の気が失せて白くなっている。

「酷いなぁ…嘘じゃありませんよ、ほら」
「…!?」

 兄の手を兆した熱に押し付ける。長い指を幹に絡ませるように。
 思考が追いつかなかったのか、一瞬呆然とした彼は瞬く間に頬に朱を上らせた。

「凄いでしょう? あんまりにも兄上が可愛すぎてこうなったんですよ」

 更に上から押さえつけ、上下に動かした。 兄の手越しに一物が跳ね上がり、膨張していくのが判る位だから、直に握らされている兄はもっと生々しい変化が判るだろう。

「馬鹿め! 昭、なにを…!」
「何をって…兄上もお好きなコトでしょ?」

 跨るせいで膝まで捲れ上がっている裾から手を差し入れ、太股に這わす。 中心に向かって行けば、引き締まった太股は跨子越しに震える。
 そしてその先には、期待通りのモノ。

「ゃ、昭!」

 着衣越しに形を成した自身を撫でると焦った様な悲鳴が漏れる。 もうそこはしっかりと息づいていて、やわやわと揉みしだけばしっかりと天を向いた。

「ほら、もう兄上のも勃ってますよ…俺の握っただけでこうなったんでしょう?…想像、しちゃいました?」
「ぅ…」

 耳朶に直接煽るような言葉を吹き込んでやれば、面白いように堅さと質量を増した。
 吐息も閨と同じ切なさを含んでいた。その瞳から流れる涙も、もう曹丕のせいでも父親のせいでもなく、 ただ羞恥と快楽のせいのものになっていた。
(…そう、これで良い)
 そっと笑みを浮かべる。兄に余計な思考は必要ないのだ。

「ね、兄上? もう、これは要らないですよね。濡れちゃう前に脱ぎましょうか」

 横頬にそっと口付けながら返事も聴かずに跨子に手を掛けた。 阻止しようとしてか、はたまた前を隠そうとしてか慌てたように兄の手が下肢に手を伸びたが、 大した障害にもならなくて一気に膝まで下ろす。途端にぶるりと飛び出した熱に俺はほくそ笑み、兄は酷い羞恥に戦慄いた。

「な…この愚弟!! 馬鹿昭!」
「酷いですね、兄上。勝手にこんなにしてそういうこと言っちゃいます?」

 綺麗な顔と魅力的な唇から怒気と罵声を浴びさせてくる兄自身に指先を当てた。 くり、と指先で敏感な先端を弄くると先から蜜が滲む。

「っ、それはお前が…ふァッ!?」
「しかも折角俺といるのに、兄上は父上とアイツの事ばかり考えて…お仕置きしちゃいますよ?」

 きゅう、と先を握ってにっこりと笑う。肩先に縋る手がいくつもの皺を刻んだ。 気の強いことを言いながらも肩口で震える黒髪に唇を寄せた。

「…今は、俺の事だけ考えて下さいよ、ね? 兄上…」

 ふるり、と恐怖にではなく震えた身体は了承の証だ。 窓布を引いてあの男の蒼を部屋から閉め出しても兄はもう何も言わなかった。







- - - - - - - - - - - - - - 2011/09/12 ikuri
 最後まで書かない海石品質(と蒼さんにまた言われそう/笑)で、すみません。
 でも鯖が…ええ。(ん?)
 しかし兄上って見事父上似のツンデレ(対家族専用)を受け継ぎましたね。
 (丕様似で)美形だし、父上に似て策士だし、度胸(というか父上似の自信家)もあるし…、仲達父上が溺愛してるのも納得です。
 というか、史実父上も息子をベタ褒めしてるので、公式さんもそこら辺は抑えたのですかね。
 (※父上は正始の変で「我が家にも麒麟児がいた!」と師ーちゃんをベタ褒めてます。)

青燈…ともしびの青い光。