2−4 「…先程は失礼致しました。大変お見苦しい所をお見せしてしまいましたな」 「いえ…」 子供と武将の背を見送ってしまうと、君主から申し訳なさそうに謝罪が述べられた。 それに荀ケ(いく)は切れ味の悪い応えを返した。 己でも常の舌の滑りが幻の如く思え、余程動揺しているのかと苦々しく感じはするものの、一方でそれも当然かと自嘲した。 まさか同盟国の宮廷で、一年半以上も前に行方知れずになった主君の子息と邂逅するなどと誰が思うだろうか? しかも、同盟国の君主の加護を受けているばかりか、己を失っているのだと喩え天帝であっても想像しえまい。 「早速ではございますが、此方を…我が主がしたためた書簡にございます」 気を取り直して携えていた絹の書を差し出せば、杜預が受け取って司馬懿に恭しく献上し、 男は育ちの窺える優美とも言える手付きで紅い紐を解いて絹布に目を落とした。 内容は時候の挨拶と、今の情勢、同盟維持への意向などを書き連ねているだけの、何の他意も裏もない文章の筈だ。 事実、司馬懿の表情から見ても、それが窺えた。 だが、それでも注意深く文に秘められた情報を読み取ろうとする瞳は鋭く、 司馬懿が噂通りの慎重さと冷徹さを持つのだと示していた。 同盟は維持するに値するのか、どう扱うべきなのか。 親密な間柄であっても、それは常に頭に浮かぶ事。 非情ではあるが、生き残るためには切り捨てる時を間違えてはならない。 事実、司馬懿は他勢力との同盟破棄を躊躇いも容赦もなく実行してきた。 それは、三十路にも届かぬ若さで一大勢力を築き上げた理由の一つであった。 「……確かに。曹将軍もご健勝でいらっしゃるようで何よりです」 「有難うございます」 さほど時を経たず読み終えた司馬懿は、先程まで何を考えて、何を思ったのか一切読み取らせぬ笑みを浮かべた。 腹芸が得意と言われるだけはあり、荀ケ(いく)の目から見ても思考の欠片すら見えてこない。 - - - - - - - - - - - - - - 2011/09/26 ikuri 仲達は丕様との年齢差を考えて二十代半ば〜後半を想定…(英雄ストーリーでは年の設定は出ないので妄想し放題) ゲムでは周囲を敵国に囲まれてる中で、おそそ勢力に攻められたので慌てて仲達(政治93…自勢力パラメータトップ)で同盟を結びに行った記憶があります。(弱) 因みに、同盟結びに行ったついでに初めて会った仔丕にきゅんとしてたら良いなと心底思ってました。(死) 戻 |