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 月を愛でんと開け放たれた広間に宴席が設けられ、それは楽しく賑やかな時を運んでくる。
 だから酒を過ごしてしまったのかもしれない、と仄かな後悔を荀ケ(いく)は覚えた。
 荀ケ(いく)の故郷を知る司馬懿が荀ケ(いく)の口に合うように酒を用意してくれたとはいえ、 長旅の疲労が残る身体は酒が回り易かったのだろう、『しまった』と思った時には酔いすぎていた。 くらり、と強かな酩酊は身じろぎにも付いて回り、心地良さだけではなく些かの危機を覚える。

「荀ケ(いく)殿、どうか致しましたか?」

 余計な失態を演じる前に、と腰を上げかけた荀ケ(いく)を不思議に思ったか、 隣で酌をしてくれていた陳宮が、小首を傾げながら見上げてくる。 ほんのりと染まった頬と、若干舌足らずな物言いは彼もまた酔っているのだと思わせる。

「…お恥ずかしながら、些か酔ったようで…酔いを冷ましてきます」

 立ち上がれば、ふらりと身体が傾いだ。 酒を過ごすつもりはなかったにせよ、客人と杯と話を交わしたい将は引きも切らず、 好意を顕わにして杯を向けてくれると断れなくて、その全てについ杯を重ねてしまった結果だ。
 だが悪い酔いではない。
 上等の酒と気さくな会話はただただ心地良い酩酊しか運んで来なかった。

「では、外の四阿までご案内致しましょ…ぅ?」

 同じく立ち上がろうとした陳宮がへなりと腰を落とした。やはり彼もまた飲み過ぎたのだろう。 足腰が立たないらしく、何度も立ち上がろうとするも徒労に終わった。










- - - - - - - - - - - - - - 2012/03/05 ikuri
 陳宮殿は英雄モードだと呂布勢力軍師で登場します。
 なのでいつも陳宮殿を育てる為に早々に呂布軍を滅ぼすという…(わぁ)

 つーか、こえさんの陳宮は捕縛しても靡かない上にいつも呂布殿の副将として出陣するのが超萌える…!
 あと、陳宮殿文官のくせに赤い鎧で一騎打ちするんですよ!
 武力差があると一撃でやられちゃうのが文官なのに耐え切れちゃう(そして勝っちゃう)のが陳宮クオリティ!
 仮令勝てなくても呂布殿がいつも割り込んで助けてくれる…これは実体験です。お試しあれ。