3−2 「陳宮殿、無理をなさらず…お庭を散策するだけでも充分ですから」 「でも、」 彼は困ったように眉尻を下げた。 心持ち唇を尖らせているのは足腰が立たない自分が悔しいからか。 しょんぼりと肩を落として自らの深草色の衣の裾を弄っていた。 そのせいか、ぬうッ、と背後から現れた巨漢が影を落としても気付かない。 「…公台、何をやっている」 「…奉先?」 巨漢は三国無双と名高い呂布であった。陳宮は天を仰ぐようにして男を見上げた。 男はしきりに立ち上がろうとしていた陳宮を見ていたのだろう。 ぺたりと床に座っていた彼を余りにも軽々と片腕に抱き上げた。 「厠か?」 「違います。荀ケ(いく)殿が酔い醒ましをすると仰るので、四阿までご案内しようと…」 「…酔い醒ましが必要なのはお前だろう」 拗ねるような素振りと口調の陳宮に、見るに見かねると言わんばかりに呂布は溜息を吐いた。 その姿が気に入らなかったのか陳宮殿の眉が顰められる。 「お前、ではありません。兄上、と呼びなさい!」 「分かった分かった…」 「返事は一回!」 ぎゅ、と呂将軍の首に陳宮殿の腕が回る。首を絞める気かと思ったが、単に甘えているだけらしい。 やはり酒を過ごしていたらしい彼は逞しい首筋に子供の様に抱きついている。 常の彼からは何とも想像出来ない姿であった。 「…すまん、義兄が世話をかけたな」 「いえ、私の方こそ」 陳宮が酔って絡んだように見えているのか、偉丈夫はぶっきらぼうに謝罪を口にした。 野卑な事ばかりの噂を裏切り、威風堂々たる佇まいは真っ直ぐで誠実な姿で、好感が持てた。 - - - - - - - - - - - - - - 2012/03/21 ikuri 呂陳のターン。呂陳は喧嘩が耐えないけど、結局仲が良いイメージ。 年上の余裕で陳宮が呂布殿を甘やかしたり、身内には優しい呂布殿が陳宮を気遣ったりしてるのが理想です 戻 |