3−3 「奉先、何てことを言うのですか。世話などかけておりませぬ! 私がするのです!」 「するなら俺の世話をしていろ。お前は俺のだろうが」 「なっ、ほ、奉先?!」 直裁的な言葉にぱくぱくと口を開閉する陳宮殿は、酔いだけではなくほんのりと頬を染め上げた。 その男はと言えば、ごく真面目に言ったらしく、 真剣な眼差しでじっと見つめている。陳宮もまた惚けたように呂布を見詰めていた。 呂布のその姿は常の鎧ではなく、ありふれた濃炭の官服に身を包んでいた。 だが、三国無双と言われる男だけあって、男でも惚れ惚れする程に雄々しく、そればかりか荒々しくも精悍な顔立ちの男だ。 見惚れるのも道理と言うものだろう。暫く見つめ合っていたかと思うと、気恥ずかしげに陳宮殿がそっと身を預けた。 「…庭はあっちだ。四阿はないが、静かで良いだろう」 「…ありがとうございます」 すっかり温和しくなった陳宮殿を抱えながら、将軍が教えてくれた。 礼を言えば、彼はそのまま別の戸口へと向かい背を向けた。 どうやら此処で飲み直すよりも腕に納めた『義兄上』の酔いをどうにかするようであった。 その足取りは酔った陳宮殿を気遣って戦場での荒々しい猛将ぶりからは想像もつかない程、 緩やかで静かなもので、抱きかかえられて男の背から覗いている陳宮殿の脚も力を抜いてゆらゆらと揺れていた。 - - - - - - - - - - - - - - 2012/03/25 ikuri ぶっきらぼうだけど、優しい呂布殿を推奨。(でもきっとこの後は食われてそうな陳宮) 戻 |