3−4 宴に独り取り残されて立ち尽くしながら、鬼神と謡われる男の意外な一面に荀ケ(いく)の胸に秘かな安堵が満ちる。 陳宮の事は永いこと気になっていたのだ。 以前、陳宮は荀ケ(いく)達と共に、主である曹操の為に奔走していたのだが、 ある日突然、軍を辞して呂布の元へ仕えてしまった。 当時は武力しかない乱暴な男として名が売れていた呂布であったものだから、随分不可解な出来事であった。 口さがない者達は、曹操軍では智謀や政策で郭嘉や荀ケ(いく)に勝てない陳宮は、 軍師のいない呂布軍に逃げ出したのだと噂していたが、あの様子を見るに双方共に惹かれた結果なのであろう。 今では陳宮と呂布、そして武人として名高い張遼の三人で義兄弟の誓いを立て、その絆の強きを誇っているのだと噂では聞いていた。 袂を別ったとは言え、個人的には何の恨みもない間柄である。 この眼でかつて共に過ごした元同僚の幸せとも言うべき姿を見ることが出来て、心のつかえが一つ取れたような気がした。 「荀ケ(いく)殿、どうされました?」 「些か、酔ったので…」 呂布の示した道を行く道すがら、酒で陽気になった武将達が中座する荀ケ(いく)に親しげに声をかけて構ってくる。 君主の司馬懿自身が知謀を巡らすからか、荀ケ(いく)を文官風情と侮る輩も居らず、皆が皆敬意に満ちた態度で接してくれていた。 曹軍も才人を優遇し、自らも知略に長けた曹操が君主の為、学者に礼を尽くす者が多いが、それに勝るとも劣らない。 まるで自軍にいるかの如き居心地の良さであった。 「では酔いを醒まされたら此方でまた飲みましょう!」 今もまた、酔いを醒ました後の誘いがかかる。笑顔で承諾しながら、後ろ髪を引かれつつ、ふらふら宴席を背にした。 - - - - - - - - - - - - - - 2012/04/02 ikuri ストーリーモードの2つ目でやると陳宮殿の初期勢力は曹操軍なんですよね。 史実でおそそに愛想を尽かす前です。んで、その次のストーリーは呂布勢力だったような…。 でもこの話の陳宮殿は元曹操軍で、呂布殿に惹かれて押し掛け女房した設定で推して参ります。(わぁ) 戻 |