４－３

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「荀彧(いく)様は心配性ですね。でも心配は無用です。仲達殿は情に厚く、慈悲深い御方なのですから」

　『噂と違って』と、陳羣はくすりと笑った。その手には酒器を携え、荀彧(いく)の盃が空になるのを待っていた。呷って空にすれば、にこりと微笑んで酒を注いだ。

「それに私は元々、曹操様の元にいた頃から仲達殿と親交がございまして…今の厚遇はそれもありますかと」
「そうでしたね…いつの間にか知り合っていらしたから驚きました。何処でお知り合いに？」

　陳羣は二人きりという気安さもあってか、主君である司馬懿のことを『仲達殿』と字で呼んでいる。陳羣の旧主に仕える荀彧(いく)の前で『殿』の呼称を使うことを避けているのもあるのだろうが、それだけではない親しさと付き合いが彼らの間に存在していることを暗に示していた。
　月明かりに青白く仄めく磁器を受け取り、また返杯する。とぷり、と音を立てて酒を注いだ。

「以前、一度だけ仲達殿が許昌においでになった時がございましたでしょう？　その時に偶然、仲達殿とお話しする機会がございまして…」
「…というと、あの和議を結んだ時ですか？　まさかそれほど昔からのこととは思いもしませんでした」
「ええ。とは言え、友人として親しくして頂くようになったのは、私がこちらに来てからになるのですが」

- - - - - - - - - - - - - - 2012/12/25 ikuri
　ここの陳羣殿と仲達氏は仲良しです。会話の話題はもっぱら丕様と政と学問とかのお話ばっかりな感じ。
　史実は四友とはいえ仲良しか不明なんですよね…(呉質vs陳羣の例もあるし)。
　でも息子達は最初仲良かった？気がしたので、きっとお付き合いはあったと思われ。

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