4−6 「幸いな事に、お二人の思考回路はよく似ておりましたからね…、殿は『もう一人の儂と対話したようで、実に有意義な会見であった』と申されていた位ですから」 そう言った荀ケ(いく)は当時の、今よりも更に若かった司馬懿を思い出す。 鋭く深い才知は、若き青年の躰に不思議な魅力と威厳を満たしていた。 彼がそうだと自覚していたかは定かではないが、自信に満ちた立ち居振る舞いは、劣勢にある城主とは思えぬ存在感で、それは同じく知略に長けた曹操に相通ずるものであった。 「あの邂逅こそが今日(こんにち)に繋がっているのですから…まこと、運命は糾(あざな)える縄の如し、ですね…」 誰が今このような日を想像出来ましたでしょう? 陳羣はそう呟いて酒を呷ると、不意に悲しげな笑みを浮かべた。 「長文、どうなされました?」 「いえ、返す返すも子桓様がお可哀想だと…災いなどもう無ければ良いのですが…」 空になった杯に長文が手酌で酒を注ぐ。しかし、杯を満たすには足りず、外に控えていた侍女に声を掛けて酒の続きを命じた。 彼らしくもなく深酒するらしい。すぐに運ばれてきた酒を早くも両の杯に注いでいる。 「…荀ケ(いく)様、もう曹操様にはお知らせしたのですか?」 「…一応、報告として文を送りましたよ」 - - - - - - - - - - - - - - 2013/02/12 ikuri 泣いたり愚痴ったりする感じの悪い酔い方する長文殿推奨。 戻 |