花魄の王・7 なのに何故、地上の花が相応しかろう? 湧き上がる尊崇の念に恭しく拱手した。その意味を正しく理解して臣下を見下ろす主は、満更でもない様子で、喉奥で笑った。 「随分と神聖視された事だな。私は『まだ』人の子というに…」 「そう遠い未来ではありますまい…」 己を始めとして、40以上の都市で覇者を目指した者達は大半が潰え、今はもう両手に満たせぬ程しか残っていない。 その中でも殿は一番その場に近い。十年あれば皇帝の座を、十五年あれば中華を遍く手中に納めるだろう。子桓殿が心身共に成長し、殿が御自ら自由に遠征出来るようになったなら更に早く。 「その時になっても、そなたは我が臣で在るのだろうな?」 「勿論です。某の命ある限り、某は貴方の臣…最後までお側に」 良い返事だ、と彼は瞼を細めて唄うように言う。生きて傍らにあれ、と彼は願うように呟く。 今は乱世。離反も死別も当たり前のように存在する中で、彼は己の存在が失われるのを惜しんでいた。嗚呼、どうして彼から離れられるだろうか。 「天人にも臣下はあろう? ならば、そなたが天の花を摘んでくれれば良いではないか」 彼が己の名を呼び、己の存在を肯定する。それだけで己には地上の全ての歓びを超えるのだから。 「―――遵命」 己は変わらず、その時をただ待とう。彼の為に華を捧ぐその時を。 - - - - - - - - - - - - - - 2013/06/03 ikuri 花魄の王終わりです。 でもシリーズ的な続編があるという…。 戻 |